東京大学血管外科

診療

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全身ヒトを診る

全身の血管を診るということは、患者さんの個と向き合うということです。専門分化が進む医療の世界において、血管外科は良い意味で取り残されています。例えば足の虚血の患者さんがいます。なぜ足の指が壊死しているのか。動脈硬化で血管が詰まっている。それはなぜか?糖尿病がある、高血圧がある、若いころからタバコを喫っている。運動?最近はしてないなあ。そういったことは全て病気に関連します。私たちは患者さんの歩んできた人生を、お会いした瞬間から仮想同期してイメージするのです。登山が趣味の85歳の男性の下肢虚血にバイパスをしますが、心機能が悪い胃がん術後の68歳女性には同様の虚血があっても、話し合って手術の時期はじっくり見極め、はたまた手術はしない、というのも立派な選択になりうるのです。ガイドラインの手術適応をみて機械的に手術です、と告げるのは血管外科の診療にはそぐわないのです。

疾患と闘う

孫子の言葉に「知彼知己、百戦不殆」という言葉があります。置きかえてみれば、「病気を知り、患者さんの状態および我々の持っている治療手段を熟知熟練すれば、どんな治療もうまくいく」ということでしょうか。われわれの持っている治療手段はメスをもって行う手術が第一ですが、血管内治療というカテーテルやワイヤー、コイル、ステントグラフトなどを用いた低侵襲(体に負担がない)手術の症例数も激増しています。両者ともに多くの症例数を有する関連病院で修業をしてきた熟練のスタッフが揃っており、東大血管外科として優れた成績を残し、これまで学会や論文で発表してきました。

十分に戦略を練る

血管外科の症例検討は非常にエキサイティングです。なにしろその場の議論で決まったことが患者の運命を左右するからです。もちろん学会のガイドラインや様々な指針はあります。しかし病変の場所によって、手術や血管内治療の方法・組み合わせのバリエーションが広がります。施設によって、また同じ施設でも参加した医師によって治療方針が異なるということも稀ではありません。当科では、「エビデンス(論拠)に基づいた治療」をモットーにしています。すべての治療は、なぜこの方法なの?と聞かれたときにきちんと筋道立ててご説明できなくてはならない、と考えています。

幅広い知識と熟練の技術

「心臓と脳以外の全身の血管を扱う外科」である以上、当科のスタッフは血管が関与する疾患の幅広い知識を持っています。大学附属病院という性質上、多くの稀な疾患が紹介されてきます。いろいろな病院をまわっても病名がわからず、当科に来て診断がつき適切に治療がなされた患者さんは数知れません。また手術の難易度が高い、もしくは病気の性質が治療に抵抗性(すぐにバイパスが詰まる、縫ったところが破綻する)のような症例も紹介されることも多く、われわれは最後の砦として全力で結果を追い求めます。

Vascular Teamの連携

全身の血管を診るには、外科医単独で対応することは不可能です。重症下肢虚血で足部に潰瘍・壊死のある患者さんがいたとしましょう。まず壊死部に感染があれば抗菌治療を行わなくてはなりません(感染症内科)。バイパスの手術は血管外科ですが、手術前には麻酔や手術に耐えられるかの評価を行います(麻酔科、循環器内科)。不幸にもバイパスもできずに敗血症を阻止するため大切断が必要であった場合、将来の義足作成を想定、またリハビリも必須となります(整形外科・リハビリテーション科)。バイパスで血流がよくなった足部の壊死欠損部を治すのに、植皮や筋皮弁も要ります(形成外科)。糖尿病(糖代謝内科)や透析(腎臓内科)は重症虚血の患者さんによくみられる背景で、専門医による良好なコントロールが必要です。難治性の潰瘍では、血管炎がらみの血栓症もよくあり、アレルギー・リウマチ内科と相談して手術時期を決めることもあります。

術前術後ともに、血管やその機能評価には検査技師さんの技量にわれわれは頼っています。その所見によって手術の方法が変わることも多いのです。血管内治療には放射線技師の協力は大きな力となります。またナース(バスキュラーナース)によるフットケアによって、潰瘍治癒の成果は驚くほど変わります。

このように血管疾患は多くの医療連携を介して行われていきます。血管外科医はその司令塔としての役割を果たすことになるのです。

対象疾患

血管外科の対象疾患は図のように多岐にわたります。

頻度の高い疾患

頻度の低い疾患

などなど

主な手術と戦略・方針

血管外科で扱う病気の一部と治療戦略を、当科独自の視点でお示しします。
下記の他にも多くの疾患があり、随時アップロードする予定です。

動脈瘤

動脈狭窄・閉塞

珍しい血管疾患

その他

下肢閉塞性動脈硬化症リスクカルキュレーター

2022年、当科の宮田哲郎前病院教授が筆頭著者で書かれた論文がpublishされ、そこに下肢動脈閉塞症患者の血行再建後2年の成績が計算できるリスクカルキュレーターが発表されました。JCLIMBという日本の症例が登録されたレジストリーからの3505例(2013-2017年)から導きたしたものです(Miyata T, et al. Prediction Models for Two Year Overall Survival and Amputation Free Survival After Revascularisation for Chronic Limb Threatening Ischaemia. Eur J Vasc Endovasc Surg 2022)。当科の宮原和洋がこれをアプリ化しました。手術前の患者さんのリスク評価にご利用いただけます。

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