教育(研修)
外科医は手術が上手でなくてはなりません。あたりまえのことです。しかし初めから上手な人はいません。では外科医はどのように腕をみがくのでしょうか。
従来、外科医の世界はいわゆる徒弟制度に似て、自分がついた先達の指導に依存していたといってよいでしょう。熱意のある先輩に丁寧に指導され、症例の多い病院で多くの経験を積めば数年でいっぱしの外科医らしくなっていく。これがキャリアの積み上げ方でした。しかし患者さんの生命がかかる手術において術者の技量にブレがあるということは大きな問題でした。特に心臓外科や脳外科といった少しのミスが大きな合併症を引き起こす難易度の高い手術が多い科では、若手のトレーニングをどうするかということが議論されてきました。
血管外科医はどうでしょうか。ほとんどの血管外科医は一般外科、特に消化器外科を中心に修練を積みます。若手が行う血管の手技は内シャント作成術、静脈瘤抜去術、高位結紮術など比較的容易で合併症のリスクが低く、起こったとしても重篤にはなりにくい症例を多く経験していきます。よって難易度の低い手術から高い手術へと経験値を重ねていくプロセスにそれほど無理がありません。
しかし昨今の社会的要請としての、“若手医師のトレーニングシステム”の構築は喫緊の課題とされています。心臓血管外科専門医認定機構は専門医申請の条件としてOff the Job Trainingを30時間行う、ということをクレジットとしました。
Off the Job Training (Off-JT)
日本血管外科学会でOff-JT委員会が立ち上がり、当科も関与してきました。せっかくトレーニングとしてやるならば、エビデンス(論拠)を獲得しようじゃないか、というのがわれわれの考えです。
研修医、医学生、若手医師、はたまた熟練の医師までもリクルートし、われわれの作成したトレーニングシステムでその成果を評価することにしました。これは簡便で安価に構築できるセッティング(100円ショップのものが多いです)です。ただ、縫合糸やグラフトはそれなりに高価ですので、本スタディに登録いただければ、思う存分それらを使ってトレーニングができます。
医師免許を持っている参加者には、トレーニング時間に応じてCertificateが与えられます。(★見本)
日本血管外科学会のHPにも掲載されている、いわばモデルケースにもなっているものです。
キャリアパス(進路)
血管外科医への道は大学によって異なります。当科の平均的なパスについては下記のようになっています。正直なところ今までは、初期研修のころから血管外科志望であった者はほとんどいませんでした。最近は血管外科が認知され一部で高い人気を博しておりますので、前期外勤で志望してくれる若手外科医も増えてきました。しかしほとんどは一般・消化器外科を経験した後、6年目に大学で「うっかり」血管外科に入ってしまいます。
うっかり、と書きましたが血管外科に入って後悔した者はほとんどいません。大学院生以降は、結婚をして子供ができたり、人生に疲れたり、いろいろあります。その都度チーフやスタッフにご相談ください。ご家族にとってもより良い選択肢をご提示させていただくよう心がけております。
外科医が滅私奉公をする時代は終わりました。ワークライフバランスを考慮したキャリア、人事。当科の人間に聞いていただければ、納得のいく仕事場であることを体感していただけるでしょう。子供二人のお弁当を毎朝作り続けているチーフがいうのですから、間違いありません。
*旧第一外科(大腸肛門外科・血管外科)入局に至るまでの研修については、こちらをご覧ください。
東京大学外科全体の研修紹介のHPはこちらです。
症例検討会
年に二回、東大血管外科症例検討会が当院で開かれます。招待人は当科チーフで、関連病院の医師を招いて行います。各病院での半年分の治療症例の報告にはじまり、治療法に悩んだ症例、手術がうまくいった(いかなかった)症例などを提示して、みんなで意見を交換します。血管外科の治療は範囲が広いのと、治療方法が多岐にわたるので、毎回とても盛り上がります。日本の血管外科のレジェンドである佐藤紀先生(埼玉医科大学医学部教授・同総合医療センター血管外科診療科長)、宮田哲郎先生(国際医療福祉大学医学部教授・前日本血管外科学会理事長)にご出席をいただいており、有用なコメントやアドバイスをいただけるのも大変ためになります。
若手医師の方々、医学生の方々、もし興味があったら是非いらしてください。前もってメールをいただければ、当日スタッフがご案内いたします。(メール:vasculartodai@gmail.com)
当科秘書セレクトのおいしいお茶菓子や、コーヒー・ジュースなどのお飲み物も(アルコールはありません)十分にご用意しておりますので、楽しんでいただければと思います。
留学について
当科からの留学は、主に後期研修後に希望があれば行くという選択肢があります。その年齢になると結婚してお子さんがいることもあるでしょうし、行ってみたいけれど臨床のブランクができてしまう、など、さまざまに揺れます。当科の一部医師の体験談を下記に簡単にお示ししますので、もしご興味があれば詳細を直接お聞きになってもいいですし(症例検討会の後の納涼会・忘年会や、学生さんであればクリニカルクラークシップの時など)、当科チーフにお問合せいただいても結構です。