東京大学血管外科

留学体験レポート 谷口良輔

Q1留学先と留学期間を教えてください。

アメリカ合衆国イェール大学血管生物学講座・Dardik研究室、2018年11月から2021年6月の2年8ヶ月。

Q2留学するにいたった経緯を教えてください。

研究室長のAlan Dardik教授との出会いは私がまだ初期研修医1年目であった15年前に遡ります。私がたまたま血管外科をローテーションしていた時期ですが、講演のために来日されていたDardik先生が東大病院を訪れ、当時私の上司であった山本晃太先生が病院案内を任されました。これがきっかけの一つとなり、山本晃太先生はその6年後(2012年)に当科から初めてDardik研究室に留学されました。以降robustなパイプラインが構築され、私が4代目という形で留学させて頂きました。ちなみに、私も研修医の時に病棟でDardik先生と握手したはずですが、先方は全く覚えていないと思います。

Q3留学先でどんな仕事をしていましたか。

透析用動静脈シャントの基礎研究:細胞外マトリックスや血管平滑筋細胞増生の制御因子であるTransforming Growth Factor-β (TGF-β)の抑制が、シャント血管のリモデリングに与える影響をマウスモデルを用いて研究した(https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/ATVBAHA.122.317676)。
その他:学会発表、論文作成。研究室メンバーが携わる動物実験関連のマネージメント(実験計画書の変更、物品、麻酔・麻薬の購入と管理などの雑務)。マウス動静脈瘻モデルを中心に、ラット大動脈置換モデル、ブタの頸動脈置換モデルの作成といった様々な動物実験。他の研究室とのコラボレーション。

Q4楽しかったことを教えてください。

家族全員で海外生活を経験できたこと。適度に田舎だが全く不便をしない素晴らしい住環境と近隣者。気の合う日本人研究者達との出会い。久しぶりにゴルフとテニスが沢山出来たこと。カリフォルニアを中心とした旨安国産ワインを200本近く飲めたこと。子供が英語を話せるようになり、多様性を肌で感じることが出来たこと。

Q5つらかったことを教えてください。

自分の研究プロジェクトのテーマが定まらなかった最初の数ヶ月。美食から遠ざかったこと(和洋問わず日本を超える国はありません)。COVIDパンデミック(留学期間の半分がこれにあたった。数カ月間研究室にはマウスの系統維持とcriticalな実験以外は行くことは許されず、毎日Zoomでラボミーティングの日々となりました。しかし、この図らずも与えられた時間の中で実験のデータ整理や文献検索など、研究室で手を動かし続けている時にないがしろにしていたことができ、結果としてはその後の研究に大きくプラスとなりました。)

Q6これから留学を考えている先生へ一言。

チャンスとやる気されあれば行かない手はないです。自分は大学院を卒業して3年間臨床に没頭した後に行きましたが、チャンスが来たときが行くべき時だと思います。昔と違いweb上に情報は沢山あります。先輩たちの話も聞き、十分準備して挑戦して下さい。

Q7Photos of Memories


Fig1. Dardik夫妻を囲んで研究室メンバーとBBQ。
Fig2. Academic Surgical Congress 2020にて。セッションの発表メンバー・座長と自撮り。
Fig3. 自宅から車で約15分のゴルフ場にて。
Fig4. Yale日本人研究者達とテニス後の打ち上げ。場所はお決まりのブリュワリー。